4月12日の朝日新聞朝刊にFlexy伊丹の記事が掲載されました。

「そもそも、この資料要る?」テレワークして湧いた疑問

有料記事 新型コロナウイルス
五十嵐聖士郎

2020年4月12日 9時30分

兵庫県内の自宅でテレワークする大手メーカーの社員
会社から離れた自宅などで仕事をする「テレワーク」。新型コロナウイルスの感染拡大で、兵庫県内でも急速に広がっている。勝手の違いでストレスもあるが、「働き方改革」の契機にもなりそうだ。
「自宅でのパソコン作業は通信スピードが遅くて、いつもいらいらする」
大手機械メーカーに勤める県内の40代の男性社員は、約1カ月前から始めた在宅勤務についてそうぼやく。20年近い会社生活のなかで、テレワークは大きな変化だ。
県内で新型コロナウイルスへの感染者が初めて確認されたのは3月1日。間もなく、男性は会社から電車通勤をやめ、在宅勤務するよう指示された。
幸い自宅2階には広さ2畳ほどの小さな「書斎」がある。会社の貸与パソコンを持ち帰り、ここで仕事をする。学校などが休みになって家にいる小さな子ども2人にのぞかれながら、時には携帯電話でやり取りしながら作業をする。
男性の仕事は、設計資料の作成だ。一つの資料だけで、A3判の紙が200ページ以上にもなる。しかも、設計資料は機密情報なので、記録媒体にコピーしたり、社外で印刷したりすることができない。
男性はA3判の資料を実物大で見るため、私物で持っていた大型モニターを使っている。「貸与パソコンは小さすぎ。モニターを持っていない社員はどうしているのだろうか」
困るのは、午前9時の始業直前はアクセスが集中するせいか、社内のネットワークになかなかつながらないことだ。1時間以上接続できない日もあった。
オフィス内と比べ、通信速度が遅いのにもイライラする。画面が固まって動かなくなることもしばしばだ。在宅勤務でも求められる作業量は同じ。「テレワークを進めるなら、通信環境を整えてほしい。おかげで、3月末締めの資料の半分が間に合わなかった」
運動不足もストレスの原因か。1日1万だった歩数計の数字は、1千に減った。たびたび滞るパソコン作業ゆえ、たばこの本数は2倍に増えた。
もちろん、悪いことばかりではない。オフィスでは同僚の話し声が耳障りなこともあったが、自宅では集中できる。片道1時間の通勤はなくなり、子どもたちは一緒にいる時間が増えて喜んでいるようだ。「通信や印刷の問題が解決すれば、これ以上ない環境だ」
在宅勤務を始めて、様々な疑問もわいた。そもそも資料はこんなに必要があるのか。A3判より小さいサイズではダメなのか――。多くの社員がテレワークをする今、仕事の見直しが迫られていると思う。
新型コロナウイルスという災いで広がったテレワークだが、日本の会社文化や働き方を変えるきっかけになるのではないか。そう期待しているという。

ビルの空きスペース→テレワーク向けオフィスに
西村康稔経済再生相は9日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、テレワークなど働き方の見直しを経済団体首脳に要請した。ワーク・ライフ・バランスを重視する機運とも重なり、在宅勤務やテレワークはさらに加速しそうだ。
調査会社の東京商工リサーチによると、新型コロナ関連の情報を開示している上場企業約1100社のうち、感染防止のために在宅勤務など働き方を変えたと公表した企業は98社あった。政府が緊急事態宣言をした兵庫など7都府県を中心に、働き方を見直す動きが強まっているという。大阪商工会議所の3月の調査でも、回答のあった275社のうち50社が在宅勤務やテレワークの対応をとると回答していた。
自宅では仕事がしにくい人のため、テレワーク用のスペースを提供するビジネスも広がりそうだ。伊丹市の阪急伊丹駅前のビルには今月15日、最大約100席を設けられるテレワーク向けオフィスが開業する予定だ。ビル内で空きスペースとなっていた延べ約700平方メートルを改装。感染防止のため、間隔をあけた利用や換気などの対策をとるという。(五十嵐聖士郎)